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ダビング 10 のお話

現在のデジタル番組を録画したりダビングする際には、 著作権保護のためのコピー制限のために 「コピーワンス」もしくは「ダビング 10」 という仕組みが使われています。

ここでは、コピーワンスやダビング 10 の仕組みやその考え方、 関連の情報などを自分のメモ用にまとめています。

現在作成中。順次内容を増やしていきます。

※ スカパー!は2012年10月から名称が変更になりましたが、 旧名称の「スカパー!e2」「スカパー!HD」の表記のままにしてあります。

【目次】

コピーワンス・ダビング 10 の歴史概要
コピーワンスとダビング 10
   - 名称と意味
   - 各放送の採用方式
   - 言葉が指し示すもの
   - ダビング 10 の位置づけ
コピーワンスの仕組み
ダビング 10 の仕組み
他の種類の機器の場合
   - 録画機器の種類
   - リムーバブルメディアの種類
   - 移動先機器類の種類



コピーワンス・ダビング 10 の歴史概要

デジタル放送が始まってからダビング 10 が始まるまでは、 おおよそ以下のような流れとなっています。

1996 年 9 月 30 日  パーフェクTV (現スカパー!) 放送開始 (デジタルCS衛星放送)。
2000 年 12 月 1 日  BS デジタル衛星放送開始。
2002 年 7 月 1 日  スカイパーフェクTV!2 (現スカパー!e2) 放送開始 (110度CSデジタル放送)。
2003 年 12 月 1 日  地上デジタルテレビ放送開始 (三大都市圏にて)。
2004 年 4 月 5 日  「コピーワンス」によるコピー制限の運用開始。(BSデジタル、地上デジタル)
2006 年 4 月 1 日  三大都市圏にて「ワンセグ」開始 (移動体通信向けデジタル放送)。
2006 年 12 月 1 日  地上デジタルテレビ放送の全国展開。
2008 年 7 月 4 日  「ダビング 10」によるコピー制限の運用開始 (BSデジタル、地上デジタル)。
2011 年 7 月 24 日  地上アナログテレビ放送の終了 (参考)。



コピーワンスとダビング 10

名称と意味

「コピーワンス」は「Copy One Generation」とか、 略して「コピワン」と言われることもありますが、 デジタル放送を

「1回 (だけ) コピー可能」
「1世代 (だけ) コピー可能」


とする録画等の際のコピー制御の仕組みです。 厳密に言うと「1回」と「1世代」では意味やできることなどが違うのですが、 ここでは詳しい説明は割愛して (ほぼ) 同じものとして扱います。

ここでいう 「コピー」は「放送されている番組を録画する」こと を指します。 この考え方は著作権法等では普通に使われるのですが、 慣れないとピンと来ないとか違和感があるかもしれません。 録画された後は「コピー不可」という状態になりますから、 コピーすることはできず、 移動することだけ ができます。



一方「ダビング 10」は録画した番組を

「9 回までのコピーと 1 回の移動 (ムーブ) が可能」


なものとして扱う方式です。 こちらの「コピー」は録画した後の番組をさらに複製することを意味しています。

ただし、後の節の図に示すように、 「録画可能回数等を含めて全てを録画した状態のまま複製する」のではなく、 「コピー不可」という状態にした番組を作り出す (複製する) と捉える必要があります。 (番組の内容そのものは複製されます)

「ダビング 10」という名称ですが、 正式な呼称および表記方法については以下のようにすることが決められています。

正式な呼称:  コピー9回+ムーブ1回 (ダビング10)
表記方法:  コピー9回+ムーブ1回 (ダビング10)
ダビング10 (コピー9回+ムーブ1回)
ダビング10


ダビング 10 はコピーワンスの使い勝手の悪さを部分的に緩和するためのもので、 この方式が使えるのはハードディスクなどを備えるレコーダー等の内部だけです。 (ダビング 10 によるコピー可能回数情報などを、 他のレコーダー等に持っていったりすることはできません)

各放送の採用方式

地デジなどの各テレビ放送が、「コピーワンス」および「ダビング 10」 のどちらの方式を主に採用しているかについては、 おおよそ以下のようになっています。

 放送の種類  採用している方式
 地上デジタル放送   ダビング 10 
 無料 BS デジタル放送   ダビング 10 
 有料 BS デジタル放送 
 (WOWWOW、スターチャンネル、BSスカパー!) 
 コピーワンス 
 スカパー!e2 
 (110度CSデジタル放送) 
 コピーワンス 
 スカパー!HD   コピーワンス 


なお、各放送の番組によっては、 上記の方式とは違うものを使って放送する場合もあります。 (さらには、スカパー!の案内チャンネルや一部のショッピングチャンネルのように、 番組にコピー制限がつかないという場合もあります)

言葉が指し示すもの

「コピーワンス」も「ダビング 10」もデジタル放送の放送や視聴、 録画時のコピー制限の 「仕組み」(全体) の名称 です。 (ダビング 10 を定めた団体等は「仕組み」ではなく「ルール」 という言葉を使っています。 また、「方式」や「枠組み」といった言葉を使うこともできるかもしれません)

しかし、場合として「コピーワンス」「ダビング 10」という言葉を、 「録画した番組」のことを指す 言葉として使う例が見受けられます。 もちろん、「仕組み全体」と「番組」は違うものですから、 仕組みの名称を番組の状態を指し示すために使うのは 間違っている といえます。

とはいえ、 「コピーワンス」や「ダビング 10」が仕組み全体を指す言葉だと 理解した上で、 「その仕組みで録画された番組」を指す言葉として「コピーワンス番組」 や「ダビング 10 番組」という言葉を使う分にはあまり問題はないでしょう。 (実際は「コピー不可状態の番組」や「コピー可能回数が残り N 回の状態の番組」 になるわけですが)

しかし、そのことをちゃんと理解していないと、 以下のような勘違いをする人がいるようです。

「コピーワンス」は「1 回(だけ)コピー可能」だから、 (録画した)「コピーワンス番組」は BD に焼いたり、 他の機器に持っていくなどのどこかの段階で 1 回コピーすることができる (例:元番組を残しつつ BD に焼くなど)
「コピーワンス」は「1 回だけコピー可能」だから、 (録画した)「コピーワンス番組」を BD に焼いたり、 他の機器に持っていくのは 1 回しかできない。 (以後は移動等はできない)


これらは価格.com のクチコミ等でたまに見かける勘違いです。 「ダビング 10 番組」についてはあまりこのような勘違いは見かけませんが、 「ダビング 10 番組をダビング 10 の情報を保持したまま BD に焼いたり、 DTCP-IP で他の機器に持っていけないでしょうか」 という質問などはたまに見かけます。

これらについては、それぞれの「仕組み」が指すもの (全体の関係) と、 「それによって録画される番組がどういう状態になっているか」を 理解すれば、勘違いや疑問・質問が少なくなるのではないかと思います。 それぞれの仕組みについては、後の節に図でまとめてみましたので、 参考にしてみてください。

なお、後の節の図の中の「コピーワンスの仕組みで録画したコピー不可の状態の番組」 と「ダビング 10 の仕組みで録画した番組を、 光学メディアや他の機器に移動した後のコピー不可の状態の番組」は 同じもの (状態) になります。

すなわち、「コピー不可」の状態になった番組については、 コピーワンスの仕組みで録画した番組なのか、 元がダビング 10 の仕組みで録画した番組なのかは 区別することができません。 そういう意味で、番組を指す言葉としては「コピー不可番組」といった、 「本来の状態を示す言葉」を使う方がよいのではないでしょうか。

ダビング 10 の位置づけ

前節の歴史概要で分かるように、 当初は「コピーワンス」によってコピー制限がされていました。 しかし、コピーワンスだと録画番組は移動 (ムーブ) しかできないため、 ムーブに失敗すると番組が消えてしまうこともあり、 制限の緩和策が求められていました。

そのような要望に対して紆余曲折した末に、 新たに「ダビング 10」という仕組みを導入することで、 録画後は移動 (ムーブ) しかできなかった制限に対して、 最大 10 回までのコピーができるようになりました。 (正確には 9 回のコピーと、1 回のムーブです)

ただし、ここで制限が緩和されたのは、 あくまで録画した機器における扱いだけで、 その先の DTCP による別機器への番組移動や、 BD/DVD 等の光学メディアへの書き込み (移動) の仕組みは特に変更はされていません。

すなわち、「ダビング 10」は「コピーワンス」 の制限が部分的に緩和はされましたが、 全体的な基本的な仕組みは 「コピーワンス」のまま なのです。

これについては、次の節以降にまとめた「コピーワンス」の仕組みの図と、 「ダビング 10」の仕組みの図を見比べてもらうと分かるかと思います。



コピーワンスの仕組み

録画やダビング (ムーブ) という観点で見た「コピーワンス」 の全体の仕組みは次の図のようになります。 (部分的に抜けているものなどもあるとは思います)




「コピーワンス」は「1 回だけコピー可」と説明されることもありますが、 前述のようにこの 「コピー」は「録画」のこと を指します。

コピーワンスの場合、録画された時点で番組のコピー制御情報は 「コピー不可」となります。 そのため、録画後はコピーはできず、以後は移動 (ムーブ) しかできません (機器等が対応していれば、移動は次々と行うことができます)。 移動なので、移動後は移動元のレコーダーのハードディスク等から番組が消えます。

なお、この図は「コピーワンス」についての全体的な関係や動作・処理を 説明するためのものであって、 現在販売されている製品が全てこれらの機能を持っていたり、 ここに書かれている動作・処理ができるわけではありません。 (特に、DTCP による他の機器への番組の移動や、 USB HDD への録画・保存については、 その機能を持っていない機器の方が多いのが現状です)




ダビング 10 の仕組み

上の「コピーワンス」の図に合わせて描いた場合、 「ダビング 10」の全体の仕組みは次の図のようになります。 (コピーワンスの場合と同様に、 部分的に抜けていたり簡略化しているものなどもあるとは思います)




「コピーワンス」に対して変更・拡張された部分は赤字で示しましたが、 レコーダー等の録画機器の内部での録画番組の扱いと、 「移動」が最大で 10 回までできるようになったこと、 アナログダビングができるようになったことが違っていますが、それ以外 (黒字のままのところ) は「コピーワンス」と同じ なのです。

これは、コピーワンスの仕組みは、 いくつかの規格を使うことで成り立っているのですが、 それら全ての規格をダビング 10 の仕組みに合わせて変更することは いろいろな理由から難しく、放送時のコピー制御情報と、 録画機器内部の録画時の処理や録画番組の扱い (コピー可能回数情報の追加と、他の機器・メディアへのダビング時の処理) だけを変更して対処し、それ以外の部分 (iLink, LAN 経由での DTCP による番組移動や、光学メディアへの記録) の仕組みを変更しなくても成立するようにしたからではないかと推測します。

そういう意味で、BD/DVD へのダビングや他の機器へのダビング (いずれも実際は「移動」という仕組みとして動作する) を視野に入れて考えると、「ダビング 10」は

1 つの録画番組の内部に「コピー不可番組」を 10 個保有している
BD/DVD に焼いたり、iLink, LAN 経由で他の機器に番組を持っていく際は、 そのうちの一つの「コピー不可番組」を「移動」している
一回「移動」したら、一つ分の「コピー不可番組」が無くなるので、 その分「コピー可能回数」を減らすことで対応している


と考える方が、ダビング時の動作がある意味分かりやすい (理解しやすい) のかもしれません。

念のため書いておきますが、 もちろん本当にダビング 10 で録画した番組の内部に「コピー不可」 の番組データが 10 個あるという意味ではありません。

あくまで、「コピーワンス」の仕組みを部分的に変更して「ダビング 10」 にしたという経緯および現状を見た時に、他の機器へのダビング等については、 そのように考えるほうが分かりやすいのではないかという 「考え方」についての意見でしかありません。



他の種類の機器の場合

録画機器の種類

上のコピーワンスとダビング 10 の仕組みの 2 つの図は、 録画機器として HDD (ハードディスク) 内蔵の BD/DVD レコーダーを想定 していて、 そこから番組を持っていける機器類との関係を示したたものですが、 他の種類の機器の場合でもこの図の関係は 同様に適用 されます。 (機器によっては、構成や動作・処理は部分的に変わりますが)

図の左の録画機器としての「デジタルレコーダー等」に相当する機器としては、 BD/DVD レコーダーのような内蔵 HDD と光学メディアドライブを備えたものの他に、 以下のものがありえます。 (なお、ここでは、テレビやレコーダー、チューナー等の機器の種類は違っていても、 録画や移動などの処理について類似のものは一つにまとめています)

1) HDD 単体レコーダー (録画用 HDD 内蔵のテレビ/チューナー/STB を含む)
2) USB HDD (又は LAN HDD) への録画機能付きのテレビ/チューナー (内蔵 HDD および光学メディアドライブなし)
3) iLink, LAN 経由での録画機能付きチューナー/STB (スカパー!HD, CATV 等)
4) BD や iVDR-S 等のリムーバブルメディアへの録画機能のみのレコーダー/テレビ等
5) パソコン+PC 用チューナー
6) ゲーム機+専用チューナー (PS3 + torne)


1) HDD 単体レコーダー類: これは HDD を内蔵しているけど光学メディア類は持っていない機器で、 光学メディア等への直接の移動 (BD へ焼くなど) ができない ものとなります。 そのため、これらの機器での録画は基本的に 「見て消し」(見たら消す)用途が中心 となります。 (もちろん、HDD に余裕があれば長期保存もできるとは思いますが)

これらの機器で録画したものを BD 等に保存したくなった場合は、 その機能を持つレコーダーに対して iLink や LAN を使って DTCP による番組移動をした後で、 BD などの光学メディア等にさらに移動 する必要があります。 ただし、もちろん、そのような操作をするには HDD 単体レコーダー類が DTCP (iLink または LAN) のムーブ送信機能を持ち、 受け側のデジタルレコーダー類が DTCP のムーブ受信機能を持っている必要がありますが、 その機能を持つ機器はそれほど多くないため、 実際にはこの手の機器を使っている場合は、 無劣化でデジタル番組を BD 等に焼けない場合がかなり多い と思います。

iLink や LAN によるデジタル方式 (DTCP) での番組移動ができない場合は、 ダビング 10 の番組の場合に限りアナログダビングを行うことができますので、 画質は劣化しますが DVD 等に焼くことはできます。 (ただし DVD の場合、CPRM 対応ディスクが必要でかつ DVD-VR 方式でしか保存できません)

2) USB HDD 録画機能付きテレビ等: これも 1) と似ていますが、USB HDD (又は LAN HDD) がないと録画ができないので、1) とは少し違うために別に分類しました (なお、LAN HDD を USB HDD と同様の外付け録画メディアとして使う機能があるのは、 東芝 REGZA TV の一部の機種だけです)。 光学メディア類がないことによる制限や動作は 1) と同じとなります。

これらの機器は通常は USB HDD 等は別売りのため、 機器本体だけを購入しただけだと録画することはできません。 そのため、その場合は「コピーワンス」や「ダビング 10 」は無関係となります。

3) iLink/LAN 録画機能付きチューナー等: これは録画機能はあるものの、内蔵 HDD や USB 等の外付け HDD が使えなくて、 DTCP による録画機能 (かつては iLink 経由しかなく、 今は LAN 経由のものも登場しました) を使って録画するものです。 そのため、番組を録画するためには、上の図の右側の DTCP による録画機能を持つ別のデジタルレコーダー・NAS 類が必須 となります。

DTCP を使った録画になるので、ダビング 10 の仕組みで放送されている番組でも、 録画すると「コピー不可」となります。 とはいえ、この手の機器の具体的な製品例はスカパー!SD/HD チューナーや CATV STB となり、スカパー! は元々がほとんどがコピーワンスですし、 CATV の場合は地デジはパススルーの場合が多く、 その場合は普通のレコーダー等で録画できるのでダビング 10 の仕組みが使えるから問題なく、 BS デジタルを CATV STB 経由で録画する場合にのみ、 ダビング 10 の仕組みの対象外となります。 (地デジ、BS デジタル以外の CATV 独自チャンネルは、 スカパー! と同様にほとんどがコピーワンスのようです)

4) リムーバブルメディア録画レコーダー等: これは HDD ではなく、BD などの リムーバブルメディアに直接録画するタイプ のものです。 BD ドライブのみ内蔵の録画機能付きテレビや、 iVDR-S のみを搭載するレコーダー等が相当します。 また、1) や 2) の機器で SD カード類への録画ができるものの場合で、 SD カード類に直接録画する場合もこれに該当するでしょう。

これも 3) と同様に、 「コピー不可」番組しか保存できないリムーバブルメディアへの直接録画となり、 ダビング 10 の仕組みで放送されている番組であっても、 録画した番組は 最初から「コピー不可」となります

5) パソコン+PC 用チューナー: パソコンの場合は、比較的自由に部品 (パーツ) を変更できる点が、 レコーダーや録画可能テレビ等の他の専用 AV 機器と異なるところです。 そのため、機器構成によって「HDD 内蔵 BD/DVD レコーダー」に類する場合と、 1) の「HDD 単体レコーダー」に類する場合がありえます。 そもそも「PC 用チューナー」は PC 用周辺機器として単独で販売されていますので、 後からパソコンを「レコーダー」に仕立て上げることも可能となります。

この話はソフトウェアについても同様で、PC 用チューナー等に添付されている (もしくはダウンロード可能になっている) サーバソフトをインストールすることで、 番組の配信機能やムーブ機能を追加することもできます。

6) ゲーム機+専用チューナー: ゲーム機も中身はコンピュータですから、そういう意味ではこの構成も 5) と同様と言えなくはないですが、パソコンとは違って部品 (パーツ) やソフトウェアの追加や交換は自由にはできません。 例えば、通常はゲーム機の光学ドライブは読み出し専用ですが、 そのドライブを書き込み可能なものに変更することはできませんので、 この機器構成は「HDD 単体レコーダー」に類するものとなり、 録画番組は「見て消し」用途となります。 チューナーも専用のチューナーでないと動作しませんから、 そういう意味ではある意味一番特殊な種類の録画機器と言えるかもしれません。

ちなみに、いまのところこの機器構成で録画できるのは PS3 (PlayStation3) と torne の組み合わせしかありません。

なお、SCE の nasne については、torne と同様に PS3 の外付け録画機 (チューナー) と考えている人がいるかもしれませんが、 nasne は機能的には単体で録画保存ができる「HDD レコーダー+NAS」製品なので、 分類としては 6) ではなく 1) となります。

リムーバブルメディアの種類

上のコピーワンスとダビング 10 の仕組みの 2 つの図では、 「光学メディアドライブ」を経由して BD や DVD などの光学メディアに番組を移動できるように描いています。 実際にはデジタルレコーダー等では光学メディアドライブは内蔵されているわけですが、 BD や DVD 等の光学メディアそのものはレコーダー等とは別のものということで、 図では「レコーダーの外」に描いています。

さて、「コピーワンス」や「ダビング 10」の仕組みの中では、 BD や DVD 等の光学メディアは、 機器から取り外して持ち運べ、他の機器でも再生できる 「リムーバブルメディア」の一つとして定義されています。 そして、この「リムーバブルメディア」には 「コピー不可」の番組しか保存できない という規程になっています。

そのような、デジタル番組を保存・録画できるリムーバブルメディアとしては、 主に以下のようなものがあります。

種類 最大容量
 ブルーレイディスク (BD)   片面1層で 25GB。片面2層で 50GB。片面3層で 100GB。片面4層で 128GB。 
 DVD 類   片面1層で 4.7GB。片面2層で 8.3GB。 
 SD カード   現在 256GB。 
 メモリースティック   現在 32GB。 
 iVDR-S カセット HDD   現在 1TB。 


ハイビジョン画質での番組が主流となっている現在、 デジタル番組を保存するリムーバブルメディアの主役はやはり BD (ブルーレイディスク) です。 容量だけなら SD カードの大容量のものなどは BD を超えていますが、 1 枚 1 万円以上もするため、気軽にデジタル番組を保存しておくことは、 なかなか難しいでしょう。(メモリースティックも同様ですね)

アナログテレビ放送の時代はデータ量が少なくて済んだため、 DVD がテレビ番組の録画保存の主役でしたが、 デジタル放送の時代ではハイビジョン画質で放送波そのままだと、 片面 1 層の DVD にはおおよそ 30 分くらいしか録画できません。 そのため、DVD に録画する場合は AVCREC という、 番組データの圧縮を使って保存する方法が用意されています。 しかし、 AVCREC で作成した DVD は再生するプレイヤーも AVCREC に対応している必要があり、 CPRM 対応メディアが必要なことも合わせて、 いろいろと混乱の元になっているようです。

容量という意味では、iVDR-S カセット HDD が一番容量が大きいのですが、 これは中身にハードディスクを採用していることから当然ともいえます。 通常の HDD に比べると価格が高価なのがネックとなっていますが、 パソコン用のアダプタを含め iVDR-S 対応の機器で再生できる上に大容量である iVDR-S カセット HDD は、 上手な使い方をすれば意外と有用なのかもしれません。

実は、リムーバブルメディアの中で iVDR-S カセット HDD は、 技術的にはダビング 10 情報を保持して扱えるようになっているのですが、 運用規程上「リムーバブルメディア」として分類・規定されてしまっているため、 現在のところ HDD に録画したダビング 10 の番組を iVDR-S カセット HDD にダビングする際は、「コピー不可」番組の移動しかできないのです。 また同様に、ダビング 10 の仕組みで放送されている番組を iVDR-S カセット HDD に直接録画すると、他のリムーバブルメディアと同様に、 最初から「コピー不可」番組となってしまいます。


リムーバブルメディアとしてどのようなものがあるのか (規定されているのか) の詳細については、 「デジタル番組のお話」のページの 「録画・保存時の暗号化」の節 の一覧をご覧ください (最後の「汎用ハードディスク」は除きます)。

移動先機器類の種類

上のコピーワンスとダビング 10 の仕組みの 2 つの図では、 DTCP の機能を使って他のデジタルレコーダーや NAS 等に番組を移動できるように描いています。 もちろん、録画した機器や移動先の機器が iLink (DTCP) や LAN (DLNA/DTCP-IP) による番組移動 (ダビング) の機能を持っていないとこの操作はできません

図の右側の番組の移動先の機器としては、デジタルレコーダーや DTCP-IP 対応の NAS (LAN HDD) を含めて、以下のような種類のものがありえます。

1) DTCP-IP ムーブ受信対応デジタルレコーダー
2) DTCP-IP ムーブ受信対応 NAS (LAN HDD)
3) DTCP-IP ムーブ受信対応チューナー・STB
4) DTCP-IP ムーブ受信対応パソコン (リムーバブルメディア等への書き込みのみ)
5) DTCP-IP ムーブ受信対応 BD ライター
6) DTCP-IP ムーブ受信対応スマフォ・タブレット


1) デジタルレコーダー: これは、録画したレコーダーやテレビ等から 他のレコーダーへ番組を持っていくという操作になりますが、 テレビで録画したものを BD レコーダーに持っていって DLNA/DTCP-IP で配信したり、BD 焼きしたい時 などに使う方法となります。 また、録画番組を一箇所に集めたい時などにも使うことになるでしょう。

iLink での録画番組の移動機能はいくつかのレコーダーが持っているようですが、 DTCP-IP (LAN) でのムーブ受信ができるレコーダーはそれほど多くはありません。 なお、LAN 経由でさらに他のレコーダー等に番組を移動すること (DTCP-IP ムーブ送信) ができるレコーダーは東芝製だけです。 (ただし、日立マクセル製レコーダーは受信機能はないですが、 送信機能はあります)

DTCP-IP での番組の移動機能については、 まだどの機器の組み合わせでも自由に行えるほど成熟していないため、 テレビとレコーダー、レコーダーとレコーダーの 組み合わせによっては番組を移動できない場合もあります 。 よく知られているところでは、 東芝製テレビからパナソニック製レコーダーへは直接は移動できません。

なお、録画番組の送信機器側では、 DR 録画しかムーブ送信できない場合もよくあるので注意が必要です。

2) NAS (LAN HDD): これは主に、 番組を長期保存して DLNA/DTCP-IP で配信する ことができるようにする時に使う方法となります。 BD/DVD の光学メディアではなく NAS に多くの番組を置いておくことで、 録画番組を見たくなった時に比較的すぐに見られるという利便性があります。 また、 録画機器の「個体縛り」を逃れるため に、NAS にダビングしておくという使い方もよくされています。

現在 DTCP-IP 機能を使って番組を受け取ることできる NAS 製品は I-O Data 製とバッファロー製しかありません (OEM を含む)。 これらの NAS 製品はさらに他の機器に番組を移動させることもできます。

I-O Data 製 NAS は前述の東芝製テレビからパナソニック製レコーダーへの 直接移動ができない問題を補うために使われることがあります。 すなわち、まず東芝製テレビから I-O Data 製 NAS にダビングし、 次に I-O Data 製 NAS からパナソニック製レコーダーに移動するという 操作をすることで、番組を移動することができるのです。

3) チューナー・STB: 録画ができるチューナーや STB の中には、数は少ないですが、 他のチューナーや STB、 レコーダー等から番組を受けとることができるものがあります。

それらは「USB HDD レコーダー」や「BD/DVD レコーダー」 と同等の機能を持っていて、録画番組を保存して DLNA/DTCP-IP 配信したり、BD 焼きする ことができます。

なお現在のところ、対応製品は I-O Data 製のチューナー製品と パナソニック製の CATV STB (HDD & BD/DVD 内蔵) だけです。

4) パソコン: パソコンとなっていますが、ごく一部の製品を除いて、 実際はパソコンを経由して BD/DVD メディアや SD カード、iVDR-S カセット HDD の リムーバブルメディアへ番組を移動することだけ ができます。 残念ながらそれらの製品では パソコンの HDD (USB HDD 含む) に番組を移動 (保存) することはできません 。 唯一の例外が、東芝製パソコンで「RZポーターexpress」 ソフトが動作するモデルです。 もちろん、各パソコンや機器が DTCP-IP のムーブ受信機能に対応している必要があります。 (正確には、 対応のソフトウェアがインストールされていて動作している必要があります)

パソコンを経由した番組の移動 (ムーブ受信) 方法としては以下のものがあります。

東芝製パソコンを使って、BD/DVD に焼く、または SD カードに保存する。 (DTCP-IP 受信ソフトがバンドルされている機種に限る)
東芝製パソコンで「RZポーターexpress」ソフトを使って、HDDに保存する。 (「RZポーターexpress」ソフトが動作する機種に限る)
I-O Data, Buffalo, Pioneer, ロジテック製の USB 接続 BD/DVD ドライブを使って BD/DVD に焼く。 (DTCP-IP 受信ソフトがバンドルされている機種に限る)
I-O Data 製もしくは Digion 製の DTCP-IP 受信ソフトと任意の BD/DVD ドライブを使って、BD/DVD に焼く。
I-O Data 製 USB 接続 iVDR-S アダプタ (OEM を含む) を使って iVDR-S カセット HDD に保存する。


BD/DVD 焼きができる方法を使うと、BD レコーダーがなくても、 録画対応テレビや光学メディアを持たないレコーダー等で録画した 番組を BD に焼くこと ができます。 ただし、この方法も全ての機器の組み合わせで動作するとは限りませんので 注意が必要です。

5) BD ライター: これは、BD 焼きができる機能を持つ機器で、 4) と同様に録画テレビ等から録画番組を受け取って BD 焼きをすることができます。 4) と違って、パソコンがなくても使えますので、 BD レコーダーもパソコンもないという場合に より簡単に BD 焼きができる ようになります。

現在のところ、東芝製の BD プレイヤー/ライター (D-BR1) が唯一の製品です。

6) スマフォ・タブレット: 急速に普及しているスマフォやタブレットの中には、 対応レコーダーから「持ち出し番組」等をダビングして視聴できるものがあります。 ただし、 特定のメーカー (多くは自社製) の特定の機種 からのダビングにしか対応していない場合が多く、 かつレコーダー側で事前に持ち出し番組データを作成しておく必要があるなど、 スマフォ・タブレット専用の特別な機能と捉える方がよいでしょう。


多くの機器では、番組の移動は移動元 (送信側) の機器で操作して行います (アップロード型)。 それに対して、少数ですが中には移動先 (受信側) の機器から操作する形の移動方法を使うものもあります (ダウンロード型)。 この場合、移動元、移動先ともにダウンロード型の移動機能に対応している 必要があります。

移動元 (送信側) の機器としてダウンロード型の移動機能しか持っていないものとして、 SCE の nasne があります。 そのため、nasne から録画番組を移動することができるのは、 ダウンロード型の番組移動に対応した機器やソフトのみとなります。

また、スマートフォンやタブレットの中には、移動先 (受信側) の機器としてダウンロード型の移動 (受信) 機能しか持っていないものもあります。


録画番組を DTCP-IP (LAN) の機能を使って受信することができる機器として どのようなものがあるのかの詳細については、 「各製品の DTCP-IP 対応状況一覧 (その1)」 および、 「各製品の DTCP-IP 対応状況一覧 (その2)」「各製品の DTCP-IP 対応状況一覧 (その3)」 の一覧をご覧下さい。

一覧の中の「受」が○になっている製品が DTCP-IP ムーブ受信機能を持つ機器となります。





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Last modified: Mon Jan 07 23:15:04 JST 2013 [アクセス: ] inserted by FC2 system